Nikitina (2005) Pathways of Interdisciplinary Cognition

Nikitina, S. (2005) Pathways of Interdisciplinary Cognition. Cognition and Instruction, 23(3): 389-425.
2月14日の読書会で読んだ文献の概要です.

1.背景

社会的に学際研究が普及しつつあるが,これまでの認知研究では学際研究には独自の思考(学際的認知: interdisciplinary cognition)が必要なのか,一般的な思考で成り立っているのか明らかにされてこなかった.だが,おそらく学際研究には,ディシプリン間の対話をともなった心的操作――隠喩的思考,協調ワーク,アイデアの差異と結合に関する交渉――が存在すると考えられる.そこで本研究は「学際研究においてどのような認知過程が存在するのか」を明らかにすることを目指す.

2.方法とデータ

以下の学際教育プログラムに参加した学生・教員に対して,プログラム内でどのように学際研究を進めていったのかインタビュー調査を行った.

  • NEXA Program(サンフランシスコ州立大学)
  • Interpretation Theory(スワースモア大学)
  • Center for Bioethics(ペンシルバニア大学)
  • Human Biology Program(スタンフォード大学)
  • 3.結果

    学際的認知には3つの過程が存在することが明らかになった

    1.単一分野性を乗り越える

    他分野の観点を評価する,各分野の視座がもつ強みと弱みを同定する,他分野からのインプットを受容するか退ける,などの思考.そのために例えば,一つの研究対象についてのストーリーを,さまざまな分野の言葉遣いで伝えてみる作業が行われる.

    2.暫定的に統合する

    ハイブリッドな理解(同化的/対位法的:それぞれの分野を同じものだとみなす方法/独立して対になるようなものとしてみなす方法)が創発する.他の分野の観点を単に評価するだけではなく,分野が持つ,ある問題について述べ,それらの重要性を評価する能力を比較し,対比させることに至る.また,個々の分野に他分野との交流の成果を持ち帰ることで,分野内での複雑化が起きる.

    3.統合の修正

    学際的な統合が,完璧な結末に至ることはない.特定の視座を拒否することも,すべての視座を相対化してまうのでもなく,対話空間を維持し続ける

    4.議論

    この知見は学際教育にも役立てることができるだろう.

    メモ:ここでイメージされている「学際」とは,それぞれの専門分野をもった個人が参加し,別の専門をもった個人と協力して研究を進めるもの.もともと専門分野(ディシプリン)の視座を身につけていることは前提になっている.